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限局性恐怖症とは

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■限局性恐怖症とは?

限局性恐怖症は、特定の対象に対する過度の恐怖反応を特徴とする障害で、最新の診断基準であるDSM-5では「不安症・不安障害」に分類されています。恐怖の対象は非常に多岐にわたり、高所、血液、尖った物、飛行機など、日常生活で頻繁に接するものでも恐怖や不安を引き起こすことがあります。 限局性恐怖症の症状 特定の対象や状況に対して強い恐怖反応を示すことが、限局性恐怖症の特徴です。
限局性恐怖症の患者さんは、特定の恐怖刺激に直面した際、ほとんどの場合、即座に強い恐怖感に襲われます。この恐怖は一時的で軽いものではなく、非常に強烈で、一般の人が感じる恐怖を大きく超えるものです。単なる「怖いかも」という程度ではなく、過剰で不釣り合いな恐怖反応として現れるのが特徴です。
恐怖の程度は、恐怖刺激との距離や状況に応じて変化します。例えば、恐怖を感じる対象が遠くにいる場合と、すぐそばにいる場合では恐怖の強さが大きく異なります。ヘビを例にすると、10メートル先にいる場合と、手が届くほど近くにいる場合では、後者の方が圧倒的に恐怖感が増すでしょう。また、その対象が実際にその場に存在していなくても、対象の存在を予期したり、想像しただけでも恐怖が引き起こされることがあります。場合によっては、強い恐怖が原因でパニック発作が起こることもあります。

 

以下は、この障害を持つ患者さんが一般的に恐れる対象物や状況の例です。

■動物
 蛇
 犬
 トカゲ
 虫
など
■自然環境
 雷
 高所
 嵐
 水
 火
など
■負傷
 血液
 注射(針)
 予防接種や採血という言葉
など
■状況
 暗所
 閉所
 乗り物
 エレベーター
 飛行機
など
■その他
 嘔吐
 窒息
 着ぐるみ
など

限局性恐怖症の原因

限局性恐怖症の原因はまだはっきりとは分かっていませんが、心理的なストレスや適切に対処できない状況が影響を及ぼしているとされています。また、完璧主義や内向的な性格、強い競争心を持つ人がこの恐怖症になりやすいとも言われています。具体的な出来事が引き金となるケースもあり、動物に襲われた経験やエレベーターに閉じ込められた経験が原因で、その後、特定の動物やエレベーターに対して極端な恐怖を抱くことがあります。

限局性恐怖症の診断

限局性恐怖症の診断基準には、下記のものが挙げられます。
 特定の対象または状況で著しい恐怖や不安を示す
 恐怖や不安の対象と接すると、ほとんどいつも即時に恐怖(不安)といった症状を引き起こす
 恐怖や不安の対象を積極的に避ける、または恐怖や不安を感じながら耐え忍んでいる
 恐怖や不安を感じる程度が社会文化的状況から見た恐怖(不安)と釣り合わない
 恐怖や不安が6か月継続している、または恐怖や不安を避け始めて6か月が経過する
 恐怖や不安またはその回避行動により、社会的に何らかの苦痛や制限を受け
ている
 恐怖や不安またはその回避行動は他の精神疾患では説明できない

限局性恐怖症の治療

限局性恐怖症の治療には通常、薬物療法と心理療法を組み合わせて行います。薬物療法には、抗不安薬やβアドレナリン受容体拮抗薬などが効果的です。また、心理療法では曝露療法が効果的であるとされています。曝露療法とは、患者さんを恐怖やパニックの引き金となる状況や対象に直接さらすことで、その恐怖を克服するのを助ける方法です。しかし、この方法は専門的な知識と経験を持つスタッフによって慎重に行われる必要があり、不適切な実施は患者さんの不安を増大させる可能性があります。当院では、各患者さんの状態に合わせた最適な治療を提供していますので、まずは気軽にご相談いただきたいと思います。


☆ここからPOINT☆

恐怖症にはさまざまなものがあります。精神疾患の診断基準として用いられる「ICD-10」においては、「恐怖症性不安障害」に分類されます。

そもそも「恐怖、恐れ」は、自己の存在を脅かすかもしれないと感じる刺激に対する、人間の正常な感情の一つであり、明確な対象があれば恐怖になり、対象がなく漠然とした恐れは不安となります。いずれにしても、それによって危険を察知したり回避したりすることができるわけです。その内容や程度が極端になり、コントロールがきかなくなったり生活に支障が生じるようになったりすると、病気として扱う必要が生じてきます。

その特定の対象について、恐怖を抱く人とそうでない人がいることを考えると、その対象自体が怖いことであるわけではなく、「自分が怖いと感じている」ということを理解する必要があります。例えば、過去に恐怖を感じた経験がある場合はわかりやすいですが、必ずしも記憶があることばかりとは限りません。なぜかわからないけれど、人と接するのが怖い、と感じている場合もあります。潜在意識の中に設定されてしまっているのかもしれません。結局、きっかけや理由はわからないことも多いものです。

人間は意識するとそれを強化してしまうことになるため、恐怖の対象を意識すればするほど、恐怖が強くなっていきます。「なんだかわからないけれど、自分の中に「恐怖」を感じるものがある。でも、いま感じる必要のないものなら手放してしまおう」そのように設定しなおすことで、アタマの使い方が変わり、恐怖心が和らいでいくことの第一歩になります。

ちなみに、対象のある恐怖と対象のない不安では具体的な対処法が異なってきます。不安に対してはどのように認知し考えるかというアプローチ(認知行動療法)が選択されますが、恐怖に対しては対象にいかに慣れるかというアプローチ(曝露療法)が主体になります。


監修:こころとからだのケアクリニック人形町  院長 益子 雅笛(ますこ みやび)