統合失調症

統合失調症とは

統合失調症

脳が持っている「考えや心をまとめる機能」が低下し、幻覚や妄想などの症状が現れてしまう疾患です。一昔前は「予後が悪い精神疾患」「性格が変わってしまう疾患」だと考えられていましたが、現在では早期発見・早期治療できるケースが増えたり、医学的技術が進歩したりしたことで、多くの方が改善に期待できるようになりました。
統合失調症は、早いうちに薬物療法を開始させて適切な治療を継続していけば、再発を防ぐことができる疾患です。現在では、統合失調症の患者さんの約50%が、問題なく社会生活を送れていると言われています。

統合失調症の症状

脳内ネットワークの異常が起こることによって、幻覚・妄想などあらゆる症状が現れます。

妄想

  • 周りから嫌がらせを受けていると妄想する(被害妄想)
  • 周りから自分の悪口を言われていると思い込む(関係妄想)
  • 自分は神の子だと妄想する(誇大妄想)
  • 自分は電波やテレパシーで人を支配することができると思い込む(影響妄想)
  • 自分の思考が他人に知られてしまうと思うようになる
  • 他人の考えが自分の心に入り込んだと思うようになる

など

幻覚

幻聴や幻視、幻触、幻臭、幻味などが挙げられます。最も多くみられるのは幻聴です。

  • 自分に命令する声が聞こえてくる(命令幻聴)
  • 脅迫や名誉棄損を受けている、周りからの声が聴こえる。
  • 自分自身や物事について、外から実況中継が聴こえてくる
  • 一人もしくは複数の声が聴こえてくる
  • 秘密にしている内容を人に話されているように感じる

など

解体した会話

  • 支離滅裂な話をする
  • まとまりのない会話をする
  • 話の中身が脱線する
  • 話が停止する

など

感情の変化

  • 無表情、喜怒哀楽の表情が乏しい
  • 感情の起伏が乏しくなる
  • 不安や緊張が続く
  • 相手の感情や表情を理解するのが難しくなる
  • 相手の気持ちを誤解する

など

意欲の低下

  • 外に出ず引きこもる
  • 何もしないでゴロゴロしている
  • 入浴や洗顔をしない
  • 片付けられなくなる

など

緊張病性の行動

  • 全く身体を動かさなくなる
  • 全く話さなくなる
  • 不自然な姿勢をとる
  • 何の目的もなく大暴れをしてしまう

など

「病気であること」が認識できない場合も

患者さんの多くは、病識(自分自身が病気にかかっているという自覚)が乏しい傾向にあります。患者さんは妄想や幻覚などを、現実と認識されますので、第三者から妄想・幻覚を否定されてもなかなか気付けません。病識がない方の中には、精神科・心療内科での治療を拒否される方もいます。当院は、患者さんがきちんと納得した後に、治療を開始することが重要だと考えています。まずは統合失調症について、きちんと知っていただくことが重要だと思っています。また当院では、患者さんはもちろん、患者さんのご家族の方・周囲の方に向けたカウンセリングも行っています。

統合失調症の治療

薬物療法

抗精神病薬を中心に処方します。抗精神病薬は錠剤だけではなく、口腔内崩壊錠(こうくうないほうかいじょう:水なしで飲める薬)、粉薬、液剤、注射剤などもあります。薬物療法において重要なのは「飲み忘れをなくす」ことです。医師とこまめに相談し、現在の状況やライフスタイル、飲みやすさなどからご自身に合った薬を選択し、きちんと服薬の管理を行いましょう。
抗精神病薬を服用してもなかなか改善できなかった場合は、補助的な薬の処方も検討します。強い緊張感・不安には抗不安薬を、不眠がみられる場合は睡眠導入剤を、抑うつ症状がみられる場合は抗うつ薬を処方します。また、妄想・幻覚と躁うつ気分が一緒に起きている場合は、気分安定薬を処方します。

社会療法

社会復帰を目指すために、デイケアや共同作業所への通所、SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)を推奨することがあります。

SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)とは

社会で人と関わる時に必要なスキルを獲得するトレーニングです。社会生活に馴染めることを目標に行われます。
訓練を通して、挨拶や人への頼み事、断り方などのコミュニケーション方法を身につけていきます。

急性一過性精神病性障害

強い精神的ストレスを受けた後、統合失調症とよく似た精神症状が現れる一過性の疾患です。
症状はあくまで一過性のものですので、ある程度の期間が過ぎると回復できるとされています。

妄想性障害

一つまたは複数の妄想が長期間に渡って続く疾患です。統合失調症との鑑別が重要だとされていますが、統合失調症と同じ症状が現れるのは「妄想」のみで、他の症状は起こりません。