■仮面うつ病とは?
仮面うつ病は、うつ病の一種で、気分の落ち込みという精神的症状よりも、頭痛や肩こりなどの身体的な症状が目立つ特徴があります。患者さんが自身の精神的な問題を認識しにくいため、心の健康が悪化していることに気づかず、結果として適切な治療が受けられない場合が多いです。
仮面うつ病とうつ病の違い
うつ病は、抑うつ症状としての気分の落ち込みが目立つ一方で、仮面うつ病では身体的な症状が顕著に現れます。
仮面うつ病では、頭痛や肩こりのような身体症状が主として表れるため、精神的な症状が表面に出にくいことが特徴です。このため、精神的な問題を隠す「仮面」のように、身体症状が前面に出ることから仮面うつ病と称されます。
仮面うつ病の特徴
精神的な症状よりも、頭痛や肩こりといった身体的な症状の方が全面的に現れるため、患者さん自身も「うつ病」だと自覚されることが少ないのが特徴です。
■仮面うつ病の症状
仮面うつ病では、精神的な抑うつ症状よりも、頭痛や肩こりといった身体的な症状が目立ちます。この状態を長く放置すると、楽しいと感じていた活動が楽しめなくなったり、気分が常に沈んだりするようになります。仮面うつ病は、うつ病の初期症状と考えられることも多いため、発見次第、速やかに治療を受けることが重要です。
このような症状がありましたら早めにご相談ください
■様々な医療機関を受診して診断を聞いている(病院を転々としている)
■便秘
■下痢
■疲労感(倦怠感)
■食欲不振
■めまい
■立ちくらみ
■手足が冷える
■頻脈
■脈が飛ぶ
■腹痛
■やる気が出ない(意欲の低下)
■気分の落ち込み
■肩こり
■頭痛
■腰痛
■内科や整形外科を受診しても症状が改善しない
■医療機関で検査をしても原因が分からない
など
仮面うつ病になりやすい年齢は?
仮面うつ病は、本質的にはうつ病と同じで、特に働き盛りの20代から50代の方に多い傾向があります。
仮面うつ病の診断
仮面うつ病には確立された診断方法がありません。精神症状よりも身体症状が顕著な場合、まず問診で得た情報に基づき必要な検査を実施し、内科的な疾患の有無を調べます。身体的な疾患が見当たらない場合は、精神状態の検査を進め、他の精神疾患の有無も検査します。これらの検査を通じて、最終的に総合的な診断を行います。
■仮面うつ病の治療方法
仮面うつ病の治療は、うつ病の治療と同様のものになります。薬物療法を主に行い、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬を処方します。心理療法の導入も有効です。さらに、患者さんの職場や日常生活における環境調整の必要性も検討します。治療は焦らず、長期にわたって継続して行うことが大切です。
(1)お薬による治療
仮面うつ病の薬物療法には、2つの主要な目的があります。
- うつ病そのものを改善する
抗うつ薬が中心に処方され、必要に応じて抗不安薬や睡眠薬が併用されることもあります。
■抗うつ薬:脳内の神経伝達物質のバランスを調整し、うつ症状を改善します。副作用が出る場合もあるため、医師と相談しながら慎重に進めます。
■抗不安薬:不安を和らげ、心の負担を軽減します。
■睡眠薬:不眠症状を改善し、質の良い睡眠を促します。
- 現れている症状を緩和する
根本的な治療ではありませんが、身体的な不調を軽減することでストレスを軽くし、治療を進めやすくします。
■頭痛:鎮痛薬で痛みを和らげます。
■腹痛:胃薬や整腸剤を使って調子を整えます。
■肩こり:筋弛緩薬で筋肉の緊張を緩和します。
(2)精神療法
精神療法は、患者さんの心理的なサポートや思考パターンの修正を目的としています。
■認知行動療法:ネガティブな思考や行動を修正し、前向きな視点を育てていきます。
■カウンセリング:専門家との対話を通じて、抱えている問題の解決法を探りストレスの軽減を図ります。
これらのアプローチを通じて、患者さんが自分の状態を客観的に捉え、症状への対処法を学ぶことが可能になります。
(3)十分な休息
仮面うつ病の背景には、無理を重ねた生活習慣やストレスが隠れていることがあります。自分では気づかなくても、心身が限界に達している場合もあります。そのため、環境を見直し、可能な限りストレスの原因を取り除くことが重要です。
■休息の重要性:仕事や家事から一旦距離を置き、しっかりと休養を取ることで、心と体の回復を促します。
■環境の整備:自宅や職場の環境を整え、無理のないペースで過ごせるよう工夫します。
仮面うつ病の治療は長期にわたることもありますが、適切な治療とサポートを受けることで少しずつ症状は改善していきます。自分のペースで治療に取り組みながら、心身のバランスを取り戻していきましょう。焦らず、必要なときには周囲の助けを借りることも大切です。
監修:こころとからだのケアクリニック人形町 院長 益子 雅笛(ますこ みやび)